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上十条のいえ

計画地は、4mに満たない道路と昭和の建物が多く残っている、戦後から栄えていた住宅地です。

60年をかけ増築をしながら最終的形となった建物は、現在の基準に当てはめると「既存不適格建築物」となり、新築する場合4mの道路を確保するために、現状よりも小さな建物にせざるおえません。

構造的に脆弱な部分も多く見受けられ、壊して新しくするという方法もないわけではありませんが、この器の中で過ごした時間やご両親との思い出、この場所とこの建物と父がつくった家具など、愛着についてのお気持ちをお施主様から聞いた時に、この建物は処分してはいけないと思いました。

手間はかかるけど傷んでいるところは修復して、使えるところは利用して、暮らしやすくはなったけど、昔の雰囲気をそこなわない器にしたいと考えました。

断熱性や設備の性能などは現在の基準にあわせてつくっておりますので、生活する上での不憫さはないようにしておりますが、そういった数字で表せる部分よりも大切にしてること、それは「気づかい」です。

外観は、道行く人や近隣に対して威圧感なくおおらかであること、内部は、それぞれのシチュエーションで見える視線の高さ、手に触れる部分の素材感、季節ごとの光の入り方や植物の表情、傷んだ部分を取り替えられるメンテナンス性能などです。

この「上十条のいえ」は、小さなことに思いを込めた、私たちの代表作です。

建設地 東京都北区上十条
竣工時期 2022年
費用 2500万円